2008-07

視察報告・5(2月19日のできごと)世界遺産・熊野にて

2008年3月13日(木) 晴れ

きのうは必要に迫られて釧路へ行き、某大型書店・コー○ャン○ォーに立ち寄った。
ちなみに書店名を中途半端に伏字にした理由はとくに無い。

アイヌ文化伝承に力を尽くされた故・萱野茂氏の生涯をたどる写真集が平積みされていたので手にとってみた。



そういえば何日か前に、「道内の主要書店には5日ごろに並ぶ予定」というアバウトな情報が北海道新聞に掲載されていたなあ、ってなことを思い出しつつ。べつに某新聞を責めているわけではないので誤解のないよう。

300枚ほどの写真1枚1枚に妻れい子さんによる説明が添えられている。あくまでも個人の写真集であるから、手をつないで歩くお二人のほほえましい姿なんぞが垣間見られる一方で、民族の風習や文化のようすも伝えてくれているという、実に貴重な資料ともいうべき1冊だ。

興味のある方はどうぞ。


2月19日のできごと

百聞は一見に如かず−。
だからといって1度や2度見たくらいでわかったような気になるのは、むろんおこがましいことである。
だけど1度でも見ておくことによって、それがきっかけとなり、その後の興味度は特段にUPする。
紛れもない事実は、その場の空気を吸い、その場に生きるひとたちと行き会い、言葉を交わし、考えたということである。

今回は大切な大切な任務を果たすべく、三重県にやってきた。
その一方で、♪吹けば飛ぶような♪(わかる人は40代以降!?か演歌好き)民芸品店だけど観光業(の端の端)に携わる者としても意義のある日々を過ごすことができたんである。

と、前置きはこれぐらいにして。
「道の駅 奥熊野古道ほんぐう」を出発してまもなく、道沿いに立つ看板に魅かれて急遽、飛び込んでみたところは「和歌山県世界遺産センター。
http://www.sekaiisan-wakayama.jp/

2004(平成16)年、世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」は自然崇拝に根ざした神道、外来の仏教、その両者が結びついた修験道など多様な信仰形態を育んだ神仏の霊場=三重、和歌山、奈良の3県にまたがる熊野三山、高野山、吉野・大峯の3つ&熊野参詣道、高野山町石道(こうやさんちょういしみち)、大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)などの参詣道から成る…んだと。
そのうち、熊野参詣道は熊野古道とも称されるが、全国から熊野三山(熊野速玉大社くまのはやたまたいしゃ・熊野本宮大社くまのほんぐうたいしゃ・熊野那智大社くまのなちたいしゃ&青岸渡寺せいがんとじ)へと向かうために人々が通った道で、いくつかのルートに分かれている…そうだ。
中でも大阪から山の中を通って熊野へ至る「中辺路なかへち」には、熊野神の御子神をまつった王子社と呼ばれる小さな社がたくさんあり、実際の数ではなく多さの表現として九十九王子という総称が用いられている…とのこと。

すみません。付け焼刃的情報なので、本当に心底マジメに知りたい方、ちょびっとでも興味を持った方などは以下のHPに飛んで行ってください。
私のアウトドアライフ

<Kussharo Factory>のゆかいな仲間が実際に歩いた記録です。

余談であるが、屈斜路湖から一番近い世界遺産は2005年に自然遺産として登録された知床である。

でもって、和歌山県世界遺産センターは神話の聖地「高野・熊野」を近代的な空間で紹介する、なまらセンスのいいコーナー(田辺市本宮行政局内の一角にあるため)でありました。
<Kussharo Factory>のスタッフがとくに感嘆したのは、高野山を紹介するなかでの「光の言葉」。
指示された場所に手のひらをかざすと、文字通り、言葉が光で浮き出るんである。ほおおおお。
ちょっと残念だったのは、その旨の説明書きが貼ってある場所といい、言い回しがよくわからなかったことである。
ただし理解度には個人差があるので、10人中9人がわかってたまたまわからなかった1人だったかもしれないので気になさらぬよう…って、誰に言っているんだい?

身も心も神妙な気持ちに満たされ、那智の滝を目指す。

途中、切り立った岩肌が見事な渓谷が現れたので、
「カヌーでくだったら気分いいだろうねえ」
「いいだろうねえ」
と言い合っていたら、ウオータージェット船発着所という看板が見えたので無言になる。
新宮(熊野)川沿いに連なる瀞峡(どろきょう)であった。

那智山へと続く道をくねくね登っていくと、両側にお土産物屋さんや駐車場が並ぶエリアが出現する。
貧乏人にふさわしい駐車場をキョロキョロしながら探していたらドン突きまで達してしまったのでUターン。
熱心に呼び込みをするお姉さんと目が合ってしまった。
なんちゃって同業者としては気持ちがわかるだけにツライ…。

「お店、ちょっと見て行かれませんか?」
えーっと、あのですね、とりあえず那智の滝を見てから…しどろもどろうんぬんかんぬん…。
気の弱い北海道人がごにょごにょ言葉を濁していると、お姉さんはなんとも美しくおっしゃった。
「駐車料金はかかりませんから。もし、よろしければお帰りの際にお店をご覧いただいて何かお気持ち程度で…そうしていただければ…うれしいんですけど」

えっ、本当にい?
はい、素直にお言葉に甘えます。

熊野那智大社へと続く石段脇にもお土産物屋さんが。
どこのお店にも黒石という文字が掲げられている。黒曜石とは違うんだろうねえ。勉強不足のなんちゃって民芸品店人としては尋ねてみなければ。

とりあえず、あるお店の中に入らせてもらう。どれどれと見回してみると、あらフクロウもいるでねーの。
ひょいっと手にとったその瞬間、店の人はおっしゃった。

「あっ、それはニセモノ。こっちがホンモノね。ほら、値段も違うでしょ」
に、ニセモノってえと???
「黒石っていう近くで採れる石があるんですけどね。もう採れなくなってきちゃってるんですよ、量が。だから粉末状にした黒石をすこーし入れて固めて作ったのがこっち(=ニセモノ)。そもそも板状に割れやすい石なんで複雑な形の加工が難しいことは難しいんですけどね」
はあ…そ、そうなんだ。それにしても正直ですな。いきなり、第一声から。あー、びっくりした。

知らなかったけどこの那智の黒石っちゅーのは、碁石の黒で有名なんだそうだ(ちなみに白は蛤で作られているんだと)。あとは庭の置石とか硯として。
すみませんねえ、囲碁も書道も嗜まないし、庭ももっていないもんで。

屈斜路に戻ってきてからも、なんとなく気になったので黒石について調べてみたところ−。
三重県熊野市神川町の新生代新第3紀中新紀(さっぱりわからん)の地層から採掘される岩石。
試金石って言葉がありますな。金の純度測定に用いられる石のことだが、黒石はその用途に最適だったそうだ。

那智の黒石を粉末状に加工して樹脂と硬化剤を混ぜ合わせ、型に流して成型し、型から出したものを手磨きして仕上げるモノを「那智黒手磨き工芸品」とか「ニュー那智黒」と呼ぶんだって。

お店の方が説明してくれたのはこのことなのだな。
黒石の粉末がどのくらいの割合なのかは不明であるが、そこが企業秘密というかパンドラの箱というか、なのであろう。
確かに「すこーし」と強調して言っていたのが印象的であった。

その後、5軒ほど店をのぞかせてもらったが、いずれもこちらから尋ねる前にニセモノとか混ぜ物とか表現の違いはあったがちゃんと説明してくれた。なんと潔いことか。

で、やっと熊野那智大社にたどりついた。
ここに来るまでの間にも、あちこちで目にした黒い鳥は八咫烏(やたがらす)という3本足のカラスということだ。神武天皇が大和国に入る際に道案内したといわれている。

ちなみに、日本サッカー協会のシンボルマークにも採用されている鳥である。どうしてかというと、近代サッカーを日本に初めて紹介した中村覚之助氏が那智勝浦町出身だったことに敬意を表して。

勉強になるっしょ?(自分で言うな! by陰の声)

お参りして先に進む。
133メートルという落差日本一の那智の滝は、熊野那智大社の別宮である飛瀧神社のご神体だ。
青岸渡寺の三重の塔との調和が美しいのであった。

車を停めさせてもらったお店も中を見せてもらう。
「世界遺産になってからお客さん、増えました?」と尋ねてみる。
「うーん、少しは影響あったかもしれませんけど。もともと熊野詣ですとか青岸渡寺が西国札所めぐりの一番目ということでお客さまが多いものですから」

あっ、なるほどね。
知床はあっという間に観光客が増え、あっという間にブームが去った。
なんでも「公衆トイレの数が少ない」とか「食べるところ(=レストランなど)が少ない」「ごみを捨てられるところがない」「なにかと不便だ」というのが理由らしい。
聞いて呆れるっしょ? 自然遺産なんだから当たり前である。それも世界的に見て希少性があり高い価値をもった生態系も含めてなんである。むやみに野生動物に餌をあげたり、ヒグマの冬眠穴に入るツアーなんぞ企画しないでほしいもんだ。

−と、忘れていた怒りが再びこみ上げてきたりした熊野詣であった。


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