2007-11

屈斜路コタンのイチャルパ・11

2007年11月12日(月) 雨 ときどき くもり

今朝3時30分ごろまでかかって、<Kussharo Factory>の木彫り担当は自分用、そして遠路はるばる<イチャルパ>にお越しくださったTさん用の<iku-pasuy イクパスイ>捧酒箸を作り上げた。
先端部の裏面に三角形の削りを彫って完成。
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これは<par-un-pe パルンペ>といわれる。酒をひたして初めて魂が込められ、より饒舌になって人間の言葉の足りない部分を補って神々へ伝えてくれるという。

<cise チセ>住居の中では着々と準備が進む。
昨日、女性たちが心を込めて作った<pon-sitoポンシト>小さい・団子<シケペラタ><チポラタ><シラリ>酒糟、プクサ・ハマナスごはんのほか、野菜、果物、餅、お菓子、そして<kamuy-cip カムイチュプ>神の・魚=鮭などが供えられた。

午前9時50分ごろ、チセの外から子供たちの声が聞こえてきた。
地元、和琴小学校の全生徒17名がやってきたのだ。神聖な儀式ではあるが、この時世においてはたとえ和人であっても伝えていくことは必要であり、大切なことだと…。

一人ひとり、民族衣装を着せてもらいながら「おはようございます」「うわあ、ピンク(の刺繍糸で施された着物)だあ」と元気な声が響きわたった。
しかし厳かな雰囲気というのは子供たちも自然に感じ取る。

午前10時、14年目となる屈斜路コタンのイチャルパが始まった−。

<siso シソ>左座に祭主、副祭主ほか主催側が、炉を挟んで向かい合う<harkiso ハリキソ>右座に来賓の方々が着座。
<inunpe>炉縁の四隅に塩が盛られ、<ape huci kamuy アペフチカムイ>火の媼神に干した<プクサ>ギョウジャニンニク、塩、刻みたばこ、シラリが捧げられる。

続いて酒の吟味へ。祭主がその指示を出す。
<huci フチ>が一週間ほど前から仕込んでおいた<tonoto トノト>の出来栄えを確かめるものだ。この判断は“素直な思い”で下される。
<pirika tonoto ピリカ トノト>良い・酒という評価の上をいく<shi-anno pirika tonoto シ アンノ ピリカ トノト>本当に・良い・酒!という声が挙がり、出席した男性とその配偶者である女性が酒杯を受ける。

チセの中にある<ikor イコロ>宝物<rorun puyar ロルンプヤラ>上座の・窓<kamuy puyar カムイプヤラ>神・窓<swat スワッ>炉かぎ<cise apa チセ アパ>家の入口などに掲げてある昨年のイナウを新しいイナウと取り換え、改めてアペフチカムイに感謝を捧げる。

屋内で一連の儀式を終えると、カムイプヤラからお供え物やイナウを外の<ヌサ>祭壇へと運び出し、役目を終えたイナウは新しいものと取り換えられる。
削りかけに酒をひたし、<itokpa イトクパ>家に代々伝わる刻印に付け添えることでイナウに魂が込められる。これらが男性の手によって進められ、準備が整うと女性たちが着座。
アペフチカムイを通じて<wakka usi kamuy ワッカ ウシ カムイ>水の神に祈りを捧げ、いよいよ<i carpa イ チャルパ>が始まる。
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<carpa>とはそもそも撒くという意味で、お供えした食べ物をまず作った女性自身が食べ、おいしいことを確かめたうえで遠い祖先も近い祖先も一緒に食べてください、という願いを込めて行うものである。

女性たちによって<utar hopunpare wa rimsere yan ウタレ ホプンパレ ワー リムセレー ヤン>みんな・立ち上がって・踊り・ましょう!というタイトルの<rimse リムセ>踊りが舞われ、ひとりの男性が<ku rimse クー リムセ>弓の・踊りを披露。

再びチセに戻り、全員で火の媼神に無事に終えることができた報告と感謝の<オンカミ>祈りを捧げ、今年のイチャルパを終了した。
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屈斜路コタンのイチャルパ・10

(あっ…。うっかりしてたら日付が変わっちゃってた)

2007年11月11日(日) くもり のち 雨

屈斜路コタンの<イチャルパ>先祖供養祭本祭りを明日に控え、準備も大詰めである。

男性は<nusaヌサ>祭壇の横に建つ<ciseチセ>住居<inawイナウ>木幣作り。
約一週間前に、樹皮を削って乾かしておいたヤナギの木の中から、節のない12本を選び出す。
イナウは捧げる神によって種類が異なる。この12本は、屈斜路コタン周辺の湖や山の神々に捧げるためのイナウが作られる。そのほかヌサの前で行われる供養の際に捧げるイナウ、チセの中の道具類に捧げるイナウなど、もろもろ合わせて100本以上が削りだされる。

作業に先立ち、<onkami オンカミ>礼拝をして滞りなく行えるように祈る。
「うまく作ろうというよりも心をこめて作ることのほうが先祖は喜ぶ」という副祭主の言葉を支えにして、ヤナギにイナウケマキリをあてる。
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「最初からうまく作ろうなんて思うなよ。そう思ったって作れるもんじゃないぞ」
「手先だけじゃなくて腰から上半身全体を使って削れ」
「作るぞ!って緊張するとどうしても力が入るんだな。なんとなーく削ってるほうが、いい具合に肩の力が抜けるもんだ」
「なんてったって経験だ。数をこなせばいやでもうまくなる」
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おりおりに諸先輩方からのアドバイスがかかる。
最後、中心となる12本のイナウの最上部に<itokpa イトパ>家に代々伝わる刻印を彫り込んで完成となった。
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明日の本祭りで、このイトパの部分に酒が捧げられると初めて、イナウに魂がこもったことになるという。
オンカミをして無事に作業が終了した感謝を捧げ、緊張の糸がほぐれた。

イナウ作りで出た削りかすは、後日、ヌサの後ろで燃やされる。
クマザサの葉を用い、魔よけの意味をもつ<タクサ>を4本仕上げて今日の全工程が終了した。

女性は<サケヌパ>酒漉しとお供え物作りである。
儀礼の際に作られる特別料理としての基本のひとつが<ラタ煮込みである。
屈斜路コタンでは茹でたじゃがいもに鮭の筋子を加える<チポラタ煮込んだかぼちゃにシケペを混ぜる<シケペラタが作られる。

昨日、作っておいたシトのドーナツ状のものは、採ってきたヨモギの茎に通しておき、明日、炉端に掲げられる。

さあ、いよいよ本祭りだ。

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